Let's Go Crazy
2015.02.16
Let's Go Crazy
こんにちは。
(株)モリ・エンタープライズ代表の森です。
私が大学生の頃、大好きだったカリスマ・ロックスター、Prince。
ヌメヌメとなんだか爬虫類チックなビジュアル(笑)に、
見た目とウラハラな(失礼)高い音楽性で一世を風靡したミュージシャンですネ。
80年代半ば、彼の全盛期を代表する一曲が、”♪Let' Go Crazy”。
この曲を耳にすると、今でも青春時代が鮮やかに甦ります(笑)
・・・おっと、今回のブログのテーマは、Princeではありませんでした。
前回アップしました幕末の思想家吉田松陰のお話の続き、
彼が弟子たちに残した『言葉』について書いてみたいと思うのです。なのに、なぜにPrince???
実はその『言葉』というのが、意味するところ、この曲のタイトルと同じ「Let' Go Crazy」なのですね。
もちろん松蔭先生が三味線をペケペケつま弾きつつ、♪レッツ・ゴー・クレイジィィィィ~!と
甲高い声でシャウトしたわけではありません、念のため(笑)
彼が愛弟子たちに投げかけた言葉、
それは、『諸君、狂いたまえ』。
吉田松陰は学者であり思想家ですから、実にたくさんの言葉や句を残しています。
有名どころの一例をあげれば、
「死して不朽の見込みあらばいつでも死ぬべし。
生きて大業の見込みあらばいつでも生くべし。」
~死ぬことによって後世に残る志が成就できるならば、いつでも死ぬべきだ。
生きていることで大きな志が達成できるのならば、どんなことをしても生き延びるべきだ。
「至誠にして動かざるものは、未だこれ有らざるなり。」
~誠心誠意を尽くして事にあたれば、どんな難局でも必ず動かすことができる。
もし状況が打開できないとすれば、まだ自分の誠意が足りないからだ。
「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、
実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」
~読んでの通り。
「身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂」
~自分の命がこの武蔵野のどこかで終えることになっても、自分の志だけは永遠に留めておきたい。
最後の句は、処刑前日に牢獄の中で詠んだ辞世の句とされています。
自分の生死など度外視した、狂おしいまでの情熱がひしひしと伝わってきます。
そしてこの言葉通り、彼の肉体は滅んでも彼の魂は弟子たちに受け継がれ、
のちに見事な花を咲かせたのは、歴史の示す通り。
彼の残した言葉はどれも意味深く、心に留めておきたい格言ばかりなのですが、
やはりその生き様を鮮やかに象徴し、残された者たちにひときわ強い影響を与えたのは、
前述の強烈なメッセージ、『諸君、狂いたまえ』ではないかと思います。
『狂う』とは、どういうことなのでしょう?
今日では、あまり良い印象のある言葉ではありませんね。
彼の言う『諸君、狂いたまえ』とは、なにも乱痴気騒ぎのような
ハチャメチャな行動をしろ、ということではありません。
『狂う』とは、現実や日常の枠にとらわれないで、自分の信念に従い行動すること。
一見非常識なことを、分別を忘れ、志に向かって大真面目に取り組んでいくこと。
常識にとらわれていては、大きな改革は成し遂げられない。
大志へがむしゃらに突き進むその姿や行動は、普通の人の目には『狂っている』と映るのでしょう。
「西洋の文化をこの目で見たい」という一心で、国禁を犯し、死を覚悟してまで
黒船に密航しようとした吉田松蔭は、確かに狂っていたのでしょう。
わずか80人足らずの兵で、2000人以上の正規軍相手に絶望的とも言える戦いを挑み、
長州藩統一の奇跡を成し遂げた高杉晋作※は、その時、狂っていたのでしょう。
※高杉晋作・・・松蔭の愛弟子。奇兵隊を創設し、長州藩を倒幕へ方向付けた、明治維新の立役者。
百姓出身で馬に乗ることすらままならない伊藤博文※が
誰も賛同者のいない高杉の挙兵に自分一人でも付いていく、と心に決めた時、
のちの立身出世が視野にあったわけがなく、それは狂った決断だったのでしょう。
※伊藤博文・・・松下村塾に学び、倒幕運動に参加。維新後は、初代総理大臣など歴任し、政治家として活躍。
松蔭の弟子たちは、『諸君、狂いたまえ』の教え通りに、信念に従い、
その常識破りの行動をもって日本の新しい扉を開く担い手となっていきました。
歴史を振り返れば、世の中の変革者には、常に『狂』があったのだと思います。
まさに『狂った』人々こそがそれまでの常識の殻を突き破り、
科学を、文化を、社会を、人間を、新しいステージへと押し上げてきました。
「ヒトは、猿から進化しただって? アンタ、狂ってるんじゃないの!」
「リンゴが木から落ちるのをずっと眺めているあの子は、頭がおかしいのかしら…」
「地球の方が宇宙をクルクル回ってる?そんなこと考えるお前がクルクルパーだよ(笑)」
そして、現代の変革者にも、松陰先生と似た言葉を残している人がいます。
2011年に亡くなったアップルの創業者にして偉大なCEO、スティーブ・ジョブズ氏です。
彼が若者たちに残した有名なセリフ、”Stay foolish"をご存知でしょうか。
直訳すれば、『馬鹿であれ』ですね。
そう、松蔭先生のメッセージ、『諸君、狂いたまえ』を想起させませんか?
この言葉は、大学生に向けたスピーチの最後を結ぶフレーズなのですが
(正しくは、"Stay hungry, stay foolish."です)、
スピーチ全体から読み解くと、私はこのフレーズを、以下のように意訳しています。
「人の言うことや世の中の常識に惑わされず、自分の信じた道を往け。」
人が何かを始める時、それが新しいことである程、画期的なことである程、
既成概念や傍から見たらCrazyやFoolishと思われるのでしょう。
先入観や固定観念を打ち破り、自分の信念を貫き通せた者だけが、世の中を改革することができる。
真のイノベーターだった松陰先生やスティーブ・ジョブズ氏が到達し、
次代の若者たちに伝えたかった真理は、つまるところ、そう言うことだと思うのです。
「それは判るけど、世の中を改革するとか、そんな壮大なことって、自分には縁のない話だなぁ・・・」
なんて感じる人がほとんどだと思います。
そりゃそうですよね、たしかに。
日本という豊かで安定した国に暮らして、とくに政治家を目指しているわけでもないし、
みなさん、仕事に追われる毎日をクリアするのに一生懸命なのですから。
でも、そうした日々の仕事、そのやり方や取り組み方にだって、改革は必要ではないでしょうか。
「今までずっとこうしてきたから・・・」「こうやるように指導されたから・・・」
当たり前と思っている枠に捕らわれ過ぎていては、
社員としても企業としても、新たな発展の芽は育たないと思います。
同じことの繰り返しの業務だからこそ、もっと効率的な手法はないものか探ってみる。
馴れ合った仕事だからこそ、客観的な視点でやり方を今一度見つめ直してみる。
それまでの業務の常識を破ることで、画期的な成果が生まれることだってあると思うのです。
いままでの自分の仕事スタイルを変えることで、ひと回り成長することだってあると思うのです。
これまで同様の仕事ぶりからは、これまで同様の成果しか得られないのかも知れません。
仕事の上での改革は、松蔭先生やその弟子たちが成し遂げた偉業に較べれば、
あまりに矮小な話に思えるかも知れませんね。
でも、回りの社員や上司から批判的な視線や否定的な言葉を浴びつつも、
自分の信念やアイデアを貫き通すのは、会社員として大きな勇気がいるし、
これを成功に導くのは、充分にチャレンジングなことだと思います。
その結果、日々の業務の流れに新しい潮流が生まれ、会社が少しでも改革・改善され、
業績の上で成果や進歩を得ることができたなら、それは素晴らしい。
社員の本懐、ここに極まれり、ですよ。
そんな事をアタマの片隅に置きながら日常の仕事に向き合ってみると、
見慣れたオフィスの風景がまた違って見えてくるかも知れません。
「日本の改革」が吉田松陰のライフワークだったとすれば、
私たちにとっては、今、取り組んでいる仕事こそが、まさにライフワークなのですから。
「Let' Go Crazy」。
株式会社モリ・エンタープライズ
代表 森 洋一