The Master Shōin
2015.01.30
The Master Shōin
こんにちは。
(株)モリ・エンタープライズ代表の森です。
若い頃から、歴史、とくに日本史が好きでした。
とりわけ幕末・維新の動乱から新政府が立ち上がり、明治~大正~昭和にかけて
日本という若い国が世界へ勇躍していく、いわゆる近代史に醍醐味を感じます。
その手の書籍はノンフィクション、伝記、小説を問わず読みあさり、
またこの時代を背景としたドラマや映画も随分観てきましたね。
さて、そんな私が、今、楽しみにしているのが、日曜の夜、
この1月からはじまったNHKの大河ドラマ『花燃ゆ』です。
時代はドンズバの幕末から維新にかけて、舞台はこの頃、最も熱かった長州藩(現在の山口県)、
物語は、あの吉田松陰とその周辺の人物を描いた群像劇になっていくそうです。
吉田松陰といえば、幕末の思想家・兵学者であり、
明治維新の精神的指導者として広く知られている人物ですね。
そして、私にとっての歴史上No.1ヒーローであり、数多の長州志士たちの中で
不動のセンターといってもいい、あの高杉晋作の師にあたる人物です。
松陰先生、こうして見ると、ずいぶん枯れた人物に見えますが、
たしか29歳の若さで亡くなっているんですよね・・・
老け顔だったのでしょうか(笑)
彼がその短い人生の中で、どんな志をもち、いかに行動し、そして何を残していったのか。
詳しくは、大河ドラマの影響でここのところ書店には関連書籍が沢山並んでいますので
是非ご一読をお勧めしますが、要約すれば、綻びを見せ始めた幕藩体制に危機感を募らせ、
<日本>という国そのもの、そしてその精神を守り続けるために自らアクションを起こし、
そして志に共鳴した多くの弟子たちを育てた生涯でした。
基本的には学者なのですが、座して書を学ぶと言うタイプではなく、
非常に行動的な人物だったようです。たとえば、知識を吸収するために、
当時は重い罪だった(死刑になることも)脱藩をしてまで地方に遊学したり、
鎖国まっただ中のこの時代にあって「先進国の文明をこの目で見たい」という熱情から、
来航したペリーの黒船に密航を企てたり(これ以前にもロシアの艦隊にも密航を計画しています)、
幕府の独裁政治に業を煮やし、なんと自ら老中暗殺を企てたり・・・
この件なんかは、弟子たちが逆に先生を諭し、あまりにアクティブな師を必死にひきとめています(笑)
純粋すぎるほどに実直な行動力から、何度も何度も牢獄に入れられ、
そして国を憂う熱い想いは幕府に通じることなく、ついには志半ばで処刑されてしまいます。
そんな、よく言えば言行一致の行動派、悪く言えば突き抜けてクレイジーな過激派、
といった松陰先生ですが、彼の最大の偉業は、やはり、その志を受け継ぐ
多くの素晴らしい弟子たち、人物を育てた、という点につきると私は思います。
彼の私塾<松下村塾>は、倒幕や維新に功のあった志士たち、
そして明治新政府の中心となって、新しい日本という国家を牽引した多くの人物を輩出しています。
一例をあげれば、長州藩の尊王攘夷派の中心人物として高名な久坂玄瑞、
奇兵隊を組織し倒幕へと長州藩の舵を取った高杉晋作、のちの初代総理大臣伊藤博文、
日本軍閥の祖山県有朋、維新三傑のひとり木戸孝允も彼の教えを受けています。
まさにそうそうたる人物が松蔭の薫陶を受け、その志を継承し、彼の死後、
倒幕~維新~新国家設立・運営という、壮大なムーブメントの中心的存在として活躍していくのです。
さて、吉田松陰の生きざま、そして彼が育てた多くの弟子たちとの関係性は、
『人の上に立つ者はどうあるべきか』、『理想的な指導者・リーダー像』について考えさせてくれます。
私も一応肩書的には会社のトップということで社員たちを牽引する立場であり、
そして弊社のセクションごとには、部下を引っ張っていく役職・リーダー職がいます。
優れた部下を育てること、社員にやりがいをもたせる、ということ。
会社組織の中で上に立つ人間に課せられた、この重要な責務を達成するためのヒントが、
松陰先生と弟子たちとの人間関係のなかに垣間見えてきます。
まず、彼の生き方から学べるのは、『指導者こそ自らが真っ先にアクションを起こすべき』、ということ。
一般的に組織の中でそれなりのポジションに昇格してしまうと、
「動く」より「動かす」ことの方に注力してしまいがちです。
会社や上司からの指示を待つだけの『指示待ち社員』は困ったものですが、
自分では動かず、部下に指示するだけの『指示だけ上司』ではやはりダメでしょう。
まず自らが率先して行動すること。まず自らが難題にチャレンジしてみること。
その情熱的な姿は、きっと下の者たちに見られていて、良い影響を与えるはずですし、
自分で経験しなければ分からない、的確で説得力のある指示や指導力も発揮できるはずです。
逆に、自信に満ちたリーダーにありがちな、部下を自分の型に嵌め、
手綱をつけて強引に引っ張っていくようなやり方も、どうなのかなと思います。
『黙って俺の言う通りにしろ』的な豪快リーダーは一見頼もしいカンジもしますが、
組織として長い目で見れば、あまり褒められた上下関係ではないかも知れません。
もちろん力強いリーダーシップは必要なのですが、かと言って部下を自分のコマのように
動かすのではなく、部下たちに自分のアタマで考えさせ、自律的に行動させることが大切です。
イギリスの諺に、『馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない』
というものがあります。人は他者に機会を与えることはできるが、
それを実行するかどうかは本人のやる気次第、という意味ですね。
<松下村塾>は、先生が一方的に弟子に教えるスタイルではなく、先生が弟子と一緒に
意見を交わす場だったといいます。教師と生徒という立場ではなく、共に学ぶ同士として
平等な立場で接しました。門下生たちは、師の思想に触れ、師と問答を繰り返し、共に学んでいくうちに
その志は伝播し、いつしか自分のものとなり、やがて自らが行動を起こし、偉業を達成したのです。
成果を出すためには、本人たちのモチベーションを上げてやる気を起こさせること、
自律的な行動力を発揮させること、組織の中でそんな場を作ることが大事なのではないでしょうか。
そして最後のポイントは、部下をきちんと褒めていますか?、ということ。
松陰先生は、バツグンの「褒め上手」でした。自分とそう歳の差もない弟子たちに対して、
本人の前だけでなく、他人への手紙のなかでも何回も繰り返し褒めています。
それって、ちょっと褒め過ぎじゃないの、というくらいに(笑)
高杉晋作や久坂玄瑞に対しては、人物としてこれ以上はない程の賛辞を贈っていますし、
身分の低い出身で塾の末席にいた伊藤博文についてさえもちゃんと見ていて、
「将来なかなかの政治家になるだろう」などと予言にも似た言葉で賞賛しています。
それも通り一遍のお世辞じゃなく、その人の持ち味を活かした的確な言葉を用意しているかに思います。
「褒め上手は、育て上手」なんてよく言いますが、
これはなにも子育てだけでなく、大人を育てるにも大切な姿勢なのですね。
人は誰でも褒められればうれしい。それが、仕事のうえで上司からの言葉であれば、なおのこと。
褒められれば、それが自分への自信となり、栄養となり、次の仕事への活力となる。
しかしながら、日々の業務では、とかく失敗した場面での叱責の方が多くなりがちではないでしょうか。
もちろん、時として厳しい言葉を投げかけることも必要ですが、
やはりそれ以上に日頃から充分なお水をあげたいですよね。
その人なりの個性や長所をしっかりととらえて、良い点を伸ばすような褒め方をしたいものです。
・・・いやぁ、それにしても人材を育成するというのは、なかなか難しいテーマです。
松蔭先生のやり方は、多分に彼自身のキャラクターによるところも多いとは思いますが、
弟子たちの素晴らしい成長を見れば、上記のようなポイントは真理のひとつなのかな、と感じます。
他人に厳しく自分に甘く、社員や部下への点数付けがとかく辛くなりがちな私としては、
自分でこうも書きながら、どれも耳が痒くなってくるような話しばかりです(笑)。
しかし、この偉大な先人の生き方・教え方をお手本に弊社の組織にもフィードバックして、
働く人それぞれが志をもち、自律的な行動力を存分に発揮できる会社にしていきたいものです。
会社の質は、イコール社員の質。
会社というものは、やっぱり<人>でできているわけですから。
次回は、松蔭先生が、弟子たちに残した『言葉』について書いてみたいと思います。
株式会社モリ・エンタープライズ
代表 森 洋一